いじめられ、卒業までの日数を「正の字」で数え続けて、皆勤賞をとったクラスメイトの話

笑える笑えない話

高校の時のクラスメイトSは、最初は調子にのっていた

私の苗字は佐藤である。高校の時の席順は3年間、苗字順であり、席替えは一切なかった。よって、3年間同じクラスだったSとは、3年間ずっと後ろの席だったのだ。私の高校の偏差値は低く、そうすると中にはとんでもないバカもいたものである。Sもその一人だった。高校1年の新学期が始まり、多くの生徒はまわりの様子をうかがい、あまり行動しないものである。どんな奴がいるのかをじっくり観察するからである。Sは最初は、調子に乗っていた。まあ浮かれていたのである。私にも馴れ馴れしく話しかけてきた。私は適当にあしらったのであるが、すぐにSも友達ができたようで、そいつとつるんではしゃいでいたのである。

Sの調子のよさは、すぐに終わりを告げた

1ヶ月もしないうちに、Sは仲の良かった友人と大げんかをして、グループから仲間はずれにされてしまった。新しい仲間を見つけようとして、その都度、失敗し、いつしか誰も友人がいなくなってしまったのである。まあ、かわいそうといえば、そうなのであるが、自業自得という感じだった。Sは仲のいい友人がいなくなったが、べつにいじめられているというわけでもなく、孤立しているというわけでもなかった。どんどん、性格が謙虚になっていったのである。彼が成長するためには、むしろいいことだったのかもしれない。入学当時は、幼稚園児くらいの知能だったのが、3ヶ月後には、小学校3年生くらいには進化したような気がする。

生徒手帳に、「卒業まで860日」と書いているのを見つけられてしまった。

いじめられているわけではなかったが、特別に仲のいい友人のいなかったSは、彼なりに辛かったのだと思う。生徒手帳に、卒業までのカウントダウン日数を、正の字で書き始めたのである。別に彼がそれを公言したのではなく、学校で書いているところをクラスメイトに見られてしまったのである。私は、Sのところにいき「お前本当に生徒手帳に卒業までの日数を書いているのか?」と聞いたところ、現物をみせてくれたのである。私が見た時は、記載しはじめてから40日後くらいで、残り860日と書いてあった。笑えないが、大笑いをしてしまったのである。最初は、馴れ馴れしい態度だったSも、このころはかなり性格がまるくなり、むしろ謙虚な高校生になっていたのである。私ともそれなりに仲良くやっていたのだ。

高校三年になって、生徒手帳を見せてもらったら、まだつけていた

もうつぶれてしまったが、新宿三丁目にあった「てあとろん88」の店内である。当時はこの店は、カラオケ屋であり、この舞台の上で、やつが熱唱していたのである。

そんなことはすっかり忘れていたのであるが、卒業までまもなくとなった高校3年の秋頃に、「そういえばお前、まだ生徒手帳に例のやつをつけているのか?」と尋ねたら、「うん」といって、見せてくれた。「そんなに高校生活が辛いのか?」ときいたら、「地獄のようだ」と答えているのであるが、彼は3年間1日も休まずに皆勤して、卒業してしまったのである。大学生になったあと、一回だけ会って、いっしょに新宿三丁目のカラオケ屋にいったのであるが、100人以上の観客のいる舞台の上で、ツイストの「燃えろいい女」という歌を熱唱し、大歓声を浴びていた。大学を卒業してからは、大手百貨店に就職し、今も元気に働いているということである。

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