空いている電車に座っている時、ゆったりとした気分で幸福感を感じることがある。
となりにずっと誰も座らないで、ずっとこのままでいてくれたらいいなと思ったりする。
そこから少しづつ混んでくると、自分のとなりに誰がくるのかきになるわけである。
できれば、おっさんではなく、かわいい女の子が座ってくれるのが嬉しいわけである。
どんどん電車が混んできて、自分のとなりだけ誰も座ってこないと、
「ラッキー」と思うよりも、「そんなに俺の側に誰も近寄りたくないのか?」と
ちょっと落ち込んでしまったりするのだ。
53歳の小太りのおっさんである。できれば避けたい気持ちは理解できる。
そんな時に、どんな人でも座ってくれると、
「この人は私を受け入れてくれたんだ」と思い、
ちょっとした親近感を感じてしまうのである。
その人に対する最大の配慮として、できるだけその人が不快にならないように、
極力小さくなり、股をすぼめたりするのだ。
こういう状況で謙虚な気持ちになるのは、とてもいいことだと思う。
電車に乗るということは、それだけでいろいろなドラマがあるので、
けっこう楽しい。
幼稚園児くらいの時に、母親と超満員の京王線に乗った時、
そばにいたおっさんが、「ここに小さい子供がいるから、気をつけてあげて」
と大声で怒鳴ってくれたことを今でも思い出す。
なんか守られている安心感を感じたのだ。
新宿から明大前までの、短い時間であったが、よく覚えている。
もう五十年くらい前の話である。
「どおくまん」の漫画で、若い男が電車に座っていて、おばあさんが来ると
睨みつけて隣に座らせないようにして、若い女の子がくると、小さくなって
眠ったふりをして隣に座らせるようにしむけるという話があった。
彼は、その女性に気づかれないように、ジロジロみたり、匂いを嗅いだりしている
変態なのである。
