誰も日本のことなど考えていない総裁選

政治の裏側

安倍首相が突然の退陣をして混沌としている日本の政界であるが、彼らの発言する言葉とは裏腹に、誰も日本のことなど考えていないことがよくわかる。発言する言葉は、それぞれの政治家なりの大義名分に沿ったものであるかもしれないが、自分に都合のいいことを、綺麗事のように並べているだけである。数百年前、織田信長が死んだ後の清洲会議で豊臣秀吉は、「信長様の直系である三法師様が織田家の跡取りとして相応しい」といっていたが、彼が天下人になるわけもなく、ちゃっかり秀吉が天下をかっさらってしまったわけである。ありていにいえば、幼児を跡取りにすれば、自分が自由にコントロールできるというのが本音であり、実際その通りになっているわけである。それぞれの政治家の思惑について、まとめてみた。

安倍首相:とにかく前回辞めた時のような批判はされたくない

安倍首相が健康上の理由で辞めたのは本当であると思う。最初に首相になった時は、本当に体調が悪くなって何もできなくなって辞めたので、その二の舞だけは避けたかったのだと思う。こういう中途半端な状態でやめると、今後、政治的な影響力が無くなってしまうわけであるが、それよりも前回と同じような状況になり、同じような批判をされるリスクが嫌だったのだろう。逆にいえば、安倍さんが辞任した後に、どのようになろうと、基本的にどうでもいいというスタンスである。ただし、石破さんにだけはなってもらいたくはないのだと思う。安倍さん自身が押していた岸田さんになってもらいたいかもしれないが、「なってくれたらいいなあ」くらいの意識で、何が何でもなってもらわないといけないという強い気持ちは全くなさそうである。もう政治家としては、十分すぎるくらいにやったので、心理的には引退に近い状態だと思う。余力を持ちながら、息子の進次郎に議席を譲った小泉元首相と同じような心境だろう。ただし、安倍さんには息子がいないから、あえてすぐに議員をやめる意味もないので、しばらくは衆議院議員を続けるのではないだろうか。政治家としては、結果として大きな実績をつくることができなかったのは悔いが残るだろう。せめて憲法改正だけはやりたかったはずであるが、どう考えても現在の状況では不可能であるとことを悟り、諦めたのだと思う。これ以上、安倍さんが政治家としてやるべきことは存在していないのかもしれない。

菅官房長官:ワンポイントで引き継ぎ、河野太郎につなぎたい

菅さんは首相になりたいという強い希望がある人ではないと思う。それよりは自らの政治信条をどのように貫くかを考えている人だと思う。結果として、安倍政権の足を引っ張っていた石破さんにだけは総理になってもらいたくないという意思はあるかもしれない。また、実務型の菅さんからみると、岸田さんは腰が座っていないというか、はっきりした政治信条があるようには見えないはずで、あまり好きではないタイプだと思う。現在の自民党の政治家の中では、異端であるが、かなりはっきりした自分の意見をいう河野太郎を、菅さんは好きなようである。2021年の秋までに次の自民党総裁選が実施されるはずなので、今回は菅さん自身が総理になり、それを来年の秋に、河野太郎につなげてあげたいという希望があるように感じる。国防問題、外交問題、皇室問題に関して、無難なことしかいわない自民党議員が多いなかで、外務大臣、防衛大臣を歴任し、はっきりとした物言いで結果を出してきた河野太郎のような政治家が必要だと感じているはずだ。そういう思惑通りにいくかどうかはわからないが、菅さんの希望はそんなところだと思う。至極、まっとうな考え方だと思う。

麻生太郎:できれば首相臨時代理をやりたかったのに・・・

麻生さんは一回総理大臣を経験しているので、「なんとしてももう一度」という気持ちはないのだ。でも、「短期間でいいので、どうしてもお願いします」と安倍さんに言われたら、受託するつもりでいたわけである。安倍さんはそういう麻生さんの気持ちを知っていて、無視したのだ。これには、麻生さんはけっこう怒っているはずである。傷ついたといってもいいかもしれない。盟友だと思っていた安倍さんが自分を裏切ったからだ。麻生さんが描いていたのは、安倍さんの体調が悪いなら、副総理の自分が総理臨時代理として首相の仕事をして、本当に体調が悪くなり辞任することになったら、そのまま首相になるというシナリオである。「本当はやりたくないが、頼まれたので、仕方なく私がやります」といいたかったのである。特に、前回の総理の時には何の結果も出せずに、民主党に歴史的大敗北をしてしまった汚名を晴らしたいという気持ちが強いのだと思う。「安倍さんも2回目の総理で挽回したのだから、俺も・・・」という感じだったのだろう。そういう当てが外れたのである。首相候補でもある河野太郎は、麻生派に所属しているが、もはやコントロールが効かなくなっており、不快感を持っているはずである。かといって、自分の子分を見捨てるようなことをすると、かえって政界での自分の影響力がなくなるので、対応が難しいだろう。ある意味大人の人なので、絶対にかっこ悪いことはやらないと思うが、本音では腸(はらわた)が煮えくり返っていると思う。

岸田さん:とにかく首相になりたい人

今、一番、首相になりたい人は岸田さんである。本当になりたいのだと思う。ただ、なりたいのだと思う。特別なポリシーもないと思う。総理大臣になりたい人なのだと思う。彼が総理になるとしたら、なんらかの利害関係の調整で、消去法で岸田さんが首相になるほうが、その利権者たちにとって都合がいい場合だけである。安倍さんが元気で健康で、小泉さんが安倍さんを指名したように、安倍さんが岸田さんを後継指名すれば、可能性はあったかもしれないが、事実上の政界引退に近い安倍さんが後継指名もせずに、辞めてしまった後ではどうすることもできないだろう。かといって、引くわけにもいかないので、負け戦を淡々と進めていき、「万が一」に向けて待つしかないのである。かつて自民党では、大平首相が在任中に突然死してしまい、急遽だれも考えていなかった鈴木善幸さんが首相になってしまった例もある。そういうようなことがないともいえないのだ。いずれにしても岸田さんが首相になる確率は1%くらいだと思う。

二階幹事長:とにかく次回の選挙でも幹事長をやりたいだけ

この人のモチベーションは自民党の幹事長を継続してやることだけである。逆の見方をすれば、自分が幹事長でいることを支持してくれる人であれば誰でもかまわないので、応援するはずである。幹事長でい続けると、選挙区調整という最大の利権が手に入るので、それが欲しいだけである。二階さんに反抗すると、徹底的につぶしにかかってくるはずである。彼はその利権が欲しいだけの人なのだから、それをうまく調整できることが次期総理への道だともいえる。菅さんはそのへんは大人なので、自民党の幹事長ポストくらい気前よく彼にくれてやると思う。やりようによっては、政治家というのはけっこう儲かる仕事なのである。そういう視点で政治家になる人は減っているとは思うが、古いタイプの政治家の典型が二階さんなのだ。こういう人を批判するのは簡単であるが、むしろ彼のようなタイプを利用するくらいの器量がないと、総理はつとまらない。綺麗事では政治はできないのだ。

石破さん:来年の総裁選に政治生命をかける

もし、自民党の党員投票が実施されれば石破さんが首相になる可能性は高いと思う。でも、予定されているように両院議員総会で次期総理総裁が決定されれば、石破さんが選出されることはないだろう。つまり、今回、石破さんが総裁になる可能性は極めて低いのである。安倍さんにしてみると、「石破さん以外なら誰でもいい」というくらいの気持ちなのである。このタイミングで辞任した理由の多くは、「石破さんにだけはなってほしくない」という意思の表れなのだ。どういうことかというと、コロナ問題などが山積みされている現在の状況は非常事態であり、このタイミングで辞任するとゆっくり党員投票をやっている時間がない。つまり、党員投票をやれば、国民的人気の高い石破さんに有利になり、場合によっては当選されてしまうからだ。現状では国民人気ナンバーワンは石破さんである。ゆえに、突然の辞任で、緊急事態を演出したのである。手が込んでいるといえばそうである。

小池百合子を忘れてはいけない

次期、総理総裁候補のなかで、本気で日本のことを考えている人を列挙すれば、菅さん、石破さん、河野さんくらいだろう。彼らには信条があると思う。それ以外の候補者はなんだかよくわからない。絶対的にすごい政治家は存在しない。我々は相対的に優れた人を選ぶことしかできないわけである。自民党の理屈では、世論調査で一番人気のある石破さんを総理にはさせないわけである。民主主義国家でありながら、国民の意思が合法的に反映できないようにしているのだ。結論的にいえば、私の意見では、今回は菅さんに首相になってもらい、来年の選挙では、石破さんと河野さんの一騎打ちになってくれればいいと思う。まあでもそうはならないと思う。なぜなら、小池百合子がからんでくるからである。機を見るに敏な人なので、来年の衆院選挙を傍観するなんてことはありえないからだ。石破さんは自民党を出て、小池さんと組んで、新党でやるかもしれない。だから、岸田さんとかにしてみれば、これが生涯で唯一の総理になるチャンスなのである。

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