あるカレー屋の思い出「これがうちのやり方だ」

ノスタルジー

 大学生の時、学校のそばにあった、ひなびたカレーショップに入った。

客は私しかおらず、メニューはカレーとカツカレーしかなかった。

カレーを注文したら、カレーと小鉢に入ったサラダが出てきた。

私が「福神漬けはありませんか?」と尋ねたところ、おじいさんの店主が

不機嫌そうな顔で、「うちは30年間、このやり方でやっている」と

低い声でいったのだ。

無論、何もいえないので、そのまま淡々とカレーを食った。

味はまあまあで、具がたくさん入っていて、家庭的な味のカレーだった。

その後、その店に二度といくことはなかった。

先日、数十年ぶりにそのあたりを訪れたのであるが、その店は跡形も

なくなっていた。

言いかたって、重要である。現代社会で、そういう口ぶりをする飲食店経営者は

まずいないと思うが、昔はけっこういたような気がする。

インパクトがあったので、一生忘れないだろう。

逆にいうと、この時以来、似たような経験がほとんどないわけである。う

いい経験も、そうでない経験も、経験としてはとても大きな意味を持つし、

よろしくない経験のほうが、結果的に役に立っていたりするわけである。

でも、ああいう店主の店には二度と行きたくはない。

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